カーペンターズ

リチャードとカレンの兄妹によるデュオ、カーペンターズは、世界中で愛された、70年代を代表するホップ・デュオだった。その美しいハーモニーは、現在でもまったく色褪せていない。兄リチャード・カーペンターは1946年10月15日、妹カレン・カーペンターは50年3月2日にコネチカット州ニュー・ヘヴンで生まれた。リチャードは9歳のころからピアノを始め、その後63年に一家はカリフォルニア州ダウニーに移った。65年にリチャードはカレン、ウェス・ヤコブ(b)と共にリチャード・カーペンター・トリオを結成し(カレンはこのトリオに参加するためにドラムを始めた)、このトリオでＲＣＡと契約、レコーディングするが、結局発売はされなかった。67年にウェスが脱退し、残ったふたりは他のメンバーを加え、6人組のスペクトラムというグループで活動していた。またこのころから、後のカーペンターズ・サウンドの特徴のひとつとなる多重録音コーラスを手褂けるようになる。だがスペクトラムも68年に解散し、リチャードとカレンは、カーペンターズという兄妹デュオとしてスタート。69年にＡ＆Ｍと契約し、ビートルズの｢涙の乗車券｣｣のカヴァー(全米54位)でデビューする。翌70年にパート・バカラックの｢遙かなる影｣が全米No.1の大ヒットとなり、彼らは一躍トップ・スターの座に躍り出た。その後も彼らはそのホップなメロディーと明るいサウンド、そして絶妙のハーモニーで人気者となり、｢スーパースター｣｢ジンク｣｢イェスタデイ・ワンス・モア｣｢トップ・オブ・ザ・ワールド｣など、5年間に全米トップ10ヒットを12曲も生み出し、また70年代ポップスの金字塔ともいうべき傑作アルバム『ナウ・アンド・ゼン』(73年)を発表するなど、アメリカはもとより、全世界的な人気者となっていった。しかし76年以降は彼らの人気も徐々に下降し、その活動も次第に縮小していった。79年に入るとリチャードはプライヴェートな理由で約１年間休養し、カレンはその間にソロ・アルバムをレコーディングするが、発表はされなかった。その後80年からふたりで再び活動を始め、同年カレンは結婚するが、ノイローゼから拒食症にかかり、83年2月4日死去。カーペンターズは活動を停正し、その後リチャードはアレンジャーとして活動している。『イェスタデイ・ワンス・モア』は、彼らのデビューから解散までのヒット曲をＣＤ2枚組にまとめたベスト・アルバム。彼らの魅力はアルバム単位というよりも、１曲１曲の完成度の高さにあり、そういう意味でもベスト・アルバムのほうが彼らのサウンドをタップリと堪能することができる。カレンの素晴らしいヴォーカルとハーモニー・ワーク、そしてリチャードのきめ細やかなアレンジがひとつとなって、彼らでしか作れないサウンドをクリエイトしている。タイトル曲をはじめとして、「ジンク」「トップ・オブ・ザ・ワールド」「遙かなる影」など、おなじみのナンバーがズラリと並んでいる。まさにカーペンターズは70年代最高のホップ・デュオのひとつだったということを証明する、究極のベスト・アルバムだ。硬派ロック・ファンから手酷い攻撃を受けそうな音楽。でも、文句言うならこれだけのクオリティの音を作ってみなさいっての。できるわきゃないんだから。カレン亡き後のリチャードは抜け殼のよう。過去の音源をいじくり回すばかり。本ベストにもリチャードの手によるリミックスの追加録音がほどこされている。